物語 小話 『水底の舞』

 水底の舞


 かつて、私の舞を火花の様だと例えた女がいた。
 曰く、まるで旅人を照らす焚火から爆ぜる火花のような、あたたかさがあるのだと言う。
 
 そうして微笑んだ彼女は泥に沈んで既に亡く。
 それでも私は、この深淵のごとき水底で舞い続ける。
 たとえこの身が忌まわしい水に沈み、汚水に溶けて消えようとも。

 この地に生きるすべての人を、神を、守るために。

 それがあの日、人々の願いにこたえた『神』の、存在理由なのだから。