物語 小話 『水底の舞』 2024.02.14 水底の舞 かつて、私の舞を火花の様だと例えた女がいた。 曰く、まるで旅人を照らす焚火から爆ぜる火花のような、あたたかさがあるのだと言う。 そうして微笑んだ彼女は泥に沈んで既に亡く。 それでも私は、この深淵のごとき水底で舞い続ける。 たとえこの身が忌まわしい水に沈み、汚水に溶けて消えようとも。 この地に生きるすべての人を、神を、守るために。 それがあの日、人々の願いにこたえた『神』の、存在理由なのだから。 ≪ 小話一覧へ ≫