序章 第一幕
――殺して。
殺して、殺して、殺して。
愛した者を、守りたいと願った者を、救いたいと祈った者たちを、何度も何度もこの手にかけて。
繰り返される夢の中で、己の願望のために、私は、今回も貴方たちを殺めるのでしょう。
もしも私が人であったなら、10度目で壊れてしまえたかもしれない。
もしも私が神であったなら、100度目で全てを忘れてしまえたかもしれない。
もしも私が聖霊であったなら、1000度目で『そういうものだ』と受け入れてしまえたかもしれない。
けれど、私は彼らとは違う。
違うからこそ、私はこうして鮮明に絶望を繰り返すことができる。
いつかきっとたどり着く未来に、希望を託して。
そう、私の行いは、己の願望を叶えるために、貴方たちの希望になるために。
私にできるのは、これだけだから。
だから、今回も、貴方を殺すのです。
紅に燃える空の下、剣を携え呆然とする貴方に手を伸ばす。
あぁ、今回の貴方はそういう武器を使うのね。二枚の刃が連なる変わった剣。初めて見たけれど、それが私を傷つけることはないのでしょう。
あぁ、今回も貴方は、そんな顔で私を見るのね。その顔だけはいつも変わらない。信じられないものを、信じたくないものを、見てしまったというような表情。
ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
でも、きっと成し遂げてみせるから。
あなたが笑う未来に、私がいられなくても、私がきっと守るから。
だからどうか今回も、貴方の死を、私に預けて。
「――涼軻。貴方を、殺しに来ました」